オアシスの記憶

それはかつて、水が存在した証拠。

果てしなく広がる砂漠をゆく私は、
月の光が照らす無数の欠片を見つけた。

誰にも気付かれることなく、
誰のためでもなく、
砂の中にその記憶をとどめるもの。

一体どれだけの歳月が
この欠片と共に過ぎていったのだろう。

月が真上に上がった頃、
何処からか風が吹きはじめた。

・・・いつの間にか焚き火は消え、
私は深い眠りに落ちていた。

そして私は、確かに見たのだ。

かつてここが、
水と緑に溢れていた頃の遠い記憶を。

オアシスの、記憶だ。

2015年2月発表

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