18世紀の英国製バター皿
海外仕入れに出ると、よく道に迷います。
入国後に空港で、仕入れた雑貨の沢山積めるレンタカーを借り、街から街へと移動しながら仕入れをしていきます。
毎年決まって訪れている定番の仕入先は勿論沢山ありますが、それ以外の未知との出会いを求め、そして迷うのです。
基本的には目的地があって、下調べをしてから行くのですが、ナビが標準装備ではないレンタカーに当たることが多く、ちょっと道を間違えると思ったのと違う方向に連れて行かれてしまうことも。
海外仕入れをし始めた頃は、戸惑い、焦り、冷や汗をかいていましたが、迷うことに慣れてくると楽しく感じてきたりもします。
逆に良いこともあるのです。迷ったからこそ辿り着いた場所で、素敵な出会いが待っていたりします。
今回ご紹介するバタートレイとの出会いも、そんな「迷い込んだ先」での出来事でした。
その日予定していた仕入れが昼過ぎに終わり、普段は行かないエリアを通りながら50kmほど離れた宿へと車を走らせます。
途中、何軒か調べてあったアンティークショップを巡り・・・特に収穫もなく、気がついたら通るはずだったのとは違う道を走っていました。
元の道に戻ろうと曲がった道も間違え、Uターンできる感じでもなく、そのまま道なりに進むと・・・小さな街(村?)の中心部に出ました。
一回停まって今いる場所を確認しようとスーパーの駐車場に入ると、通りの向かい側に「ANTIQUES」の看板がかかった黄色くて古い小さな家を見つけました。
気になったので中に入ってみると、かなりご高齢の女性が一人でお店番をしていました。
建物自体、1800年代前半に立てられたというアンティーク。
元々は普通の住居だったと思われる2階立ての建物全体が店舗空間になっていました。
一歩踏み出すごとにギシギシと床を鳴らしながら、ひと通り店内を見て回ります。
「そんなに収穫なかったな・・・」と思いながらも幾つかの気になったアンティーク雑貨をチョイス。
お会計をしようと思って女性に声を掛けると、何やら素敵な模様の雰囲気のある小皿を沢山並べて数えています。
「古いお皿なんですか?」と聞くと、「それはもう」と女性。
そのお皿たちはバター皿で、なんと、200年以上も前のものだと言うのです。
それらの大半は18世紀半ばから後半にかけて英国で生産されていたもので、当時植民地だったアメリカで一般的に使用されていました。
日本ではバター皿、バターディッシュというと馴染みのない方も多いですが、欧米ではエッグスタンドも然り、今でも割と普通に食卓に出てきたりします。
この200年前のバター皿たちは、バター皿や塩胡椒皿を専門に集めていたコレクターさんが、ご高齢の為コレクションを女性に譲ってくれたのだそう。
「でも私も"ご高齢"だから、あなたが持っていって」と、冗談半分で言われ・・・
とにかく色合いと模様が可愛いので、流石に全部は予算的に厳しかったので、沢山ある中の半分ほどを卸してもらうこととなりました。
バター皿をよくみると無数に走っているヒビがあり、過ごしてきた年月の長さが偲ばれロマンたっぷり。
1700年代のアンティーク。日本では博物館にでも行かなければなかなか拝めません。そして可愛い。
道に迷って良かったな、と心から思いながら、その後も何度か道を間違えながら宿へと戻ったのでした。
このバター皿については、一部が 海福雑貨通販部にてご覧になれます。